記事一覧 | 2022.11.03

働き盛りの世代を中心に日本人は短時間睡眠

健康のためには睡眠が大切だということは誰もが知っていることです。それでも十分な睡眠時間がとれていない人がとても多いのが現実。睡眠不足は心身の病気の第一歩。まず睡眠不足が起こすダメージの大きさを知り、生活習慣を見直してみましょう。

 

働き盛りの世代を中心に日本人は短時間睡眠

 

健康でいるためには睡眠が大切だというと、誰でも「知っている」と答えるでしょう。でも、本当に知っているかは大いに疑問です。なぜなら日本は世界的に見ても飛び抜けて睡眠時間が短いからです。

さまざまな研究結果から、健康的な睡眠は7~8時間程度だということがわかっています。経済協力開発機構(OECD)が2021年に発表した統計によると、世界33カ国の中で日本人はもっとも睡眠時時間が短く、OECD加盟国の中で最も長いアメリカが8時間51分であるのに対して日本は7時間22分で何と89分もの差がありました。

7時間22分であれば健康的な睡眠時間の範囲内だと思われるかもしれませんが、この睡眠時間は全世代の平均です。働き盛りとなる40~50代は睡眠時間が短くなり、男女ともに7時間に足りていません。

 

 

週末の寝だめだけではカバーできない

コロナ禍でリモートワークが増えたり夜の外出が減ったりしたことで改善傾向にありますが、まだまだ理想の睡眠時間には足りていません。
このような日々の寝不足は積み重なって心身に悪影響を与えることから、「睡眠負債」とも呼ばれています。睡眠負債は週末に寝だめをしても返すことはできないことがわかっています。

ある実験では日々40分の睡眠負債を抱えていた人がそれを返済するためには3週間かかったという結果がでています。つまり土日にゆっくり寝たぐらいでは不十分なのです。

とはいえ自分の睡眠が足りていないことにさえ気づかない、つまり、睡眠負債を抱えていることにも無自覚な人もたくさんいます。

たとえば6時間睡眠を2週間続けると、2日間徹夜した状態とほぼ同レベルまで集中力や注意力が衰えるということがペンシルベニア大学の研究でわかっていますが、徹夜した人たちは集中力の衰えを自覚していたのに対し、6時間2週間睡眠の人たちは気づいていませんでした。パフォーマンスが低下した状態にも慣れてしまうからです。

睡眠が足りていないのにそのことに気がつかないというのも睡眠負債の怖いところといえるでしょう。

 

 

“たかが寝不足”が心身に大ダメージ

睡眠時間が足りておらず集中力が低下している状態というのは、日本酒を1~2合飲んだときの酔っぱらった状態の認知機能と同程度だといわれています。その結果、仕事がなかなか終わらず睡眠時間を改善できないという悪循環に。

このような睡眠不足からくるパフォーマンスの低下が引き起こしている経済損失は日本全体で年間15兆円ともいわれています。日本を不況から救うためには、実は国民それぞれが十分に眠るということが近道なのかもしれません。

もちろん睡眠不足は心身への悪影響も深刻です。慢性的に睡眠時間が足りていない人は、糖尿病や高血圧のリスクが高くなります。また、睡眠不足の状態だと食欲を抑えるレプチンというホルモンが減り、逆に食欲を増進させるグレリンというホルモンが増えることからオーバーカロリーになりといったことから太りやすくもなります。

つまり、肥満と生活習慣病が重なることで死亡リスクが高まるメタボリックシンドロームに近づいてしまうといえるのです。また、睡眠不足はうつ病リスクも高めることがわかっています。

このように睡眠不足は心身の健康を大きく損なうリスクが高く、また、深刻な医療費増大にもつながっているといえるでしょう。

 

 

睡眠不足が優しくない社会を作る!?

 

怖いことに睡眠不足が足りていないと“嫌な奴”になってしまうということもわかっています。

アメリカのカリフォルニア大学の研究では、睡眠が不足していると社会的認知脳ネットワークの活動が弱まることがわかりました。この脳活動が低下すると、「他人を助けたい」という気持ちが低下してしまうのだそうです。

実際、急な生活サイクルの変化で時差ぼけ状態になり、睡眠障害が起こりがちなサマータイム期間中はアメリカでの寄付額が10%も減少していたそうです。

日本でも何かちょっとした粗を探しては他人を攻撃するような、不寛容な世の中になってきているといわれていますが、睡眠不足も影響しているのかもしれません。

 

 

時間が足りないという人ほどしっかり寝るべき

 

十分な時間眠りたいけど忙しくて無理だという人もいるでしょう。しかし、しっかり睡眠をとり日中のパフォーマンスが上がれば自分の時間も増えるのではないでしょうか。

また、健康的な睡眠を得るためには、十分に睡眠時間を確保することも大切ですが、睡眠の質も大切です。十分に寝ているはずなのに起きたときに疲れが抜けない、すっきり起きられないという人は睡眠の質が不十分である可能性があります。

また、寝たいのに眠れないという不眠に悩んでいる人もいるでしょう。寝る前にホットミルクを飲むとか羊を数えるなど、さまざまな入眠儀式が紹介されていますが、睡眠を改善するためには寝る直前の行動だけではあまり効果的とはいえません。1日の生活全体での改善が必要になります。次回から不眠を改善する、睡眠の質を高める方法を紹介していきますのでぜひ実践してください。