記事一覧 | 2022.11.10

時間に合わせて体を最適化している体内時計

睡眠トラブルを改善するために。多くの人は夜の過ごし方だけに注目しがちです。しかし、良質な睡眠を得るためには体内時計の調節が必要であり、そのためには朝の過ごし方から重要になります。体内時計が整えば日中の集中力が高まるなど、睡眠以外にもたくさんのメリットがありますので、ぜひ実践してください。

 

 

時間に合わせて体を最適化している体内時計

 

寝つきが悪い、眠れないといった睡眠トラブルを改善するためには、寝具などの環境を変えるとか、ホットミルクを飲むなど寝る直前だけでは不十分。睡眠を改善したいなら生活を丸ごと見直してみる必要があります。なぜなら夜ぐっすり眠りたいのなら、朝や日中の過ごし方が重要になるからです。

体の中には体内時計が備わっています。この体内時計が正常に働くことで、脳や内臓が連携して時間ごとにさまざまなホルモンを分泌させたり、自律神経を切り替えたりしています。朝は集中力が高まり、夜は眠くなるといった体のリズムはこのようにして作られています。

しかし、体内時計は1日が24時間ではなく、24時間15分ほどであり実際の時間とはズレています。それでも規則正しい生活が送れるのは、朝日を浴びることで体内時計がリセットされるから。しかし、起きるのが遅いとか、夜遅くまで活発に活動しているなど、リズムに逆らった生活を送っていたりすると体内時計が実際の時間と合わなくなり、夜眠れなくなるといった不具合が起こってくるのです。

 

 

睡眠改善のカギを握るのは朝の行動

 

体内時計を整えるためにとても重要になるのが、“朝日を浴びる”ということです。体内時計の中枢は脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)にあります。視交叉上核は視床下部にあり目で見た情報を処理する場所。朝日を浴びるとその光の情報が視交叉上核に伝わり、眠りのホルモン「メラトニン」の分泌がストップ。代わりに日中の活動をサポートする「セロトニン」の分泌が始まります。

 

朝日を浴びることは、体内時計のリセットにもつながります。朝起きたらカーテンを開けて、しっかりと朝の日差しを取り入れてください。

 

また、起きたら早め(できれば1時間以内)に朝食をとることも大切です。朝食を取り入れることで腸にある末梢の体内時計が視交叉上核にある中枢の体内時計と同期するからです。朝食にとるべき栄養素は糖質とたんぱく質。糖質をとりインスリンの分泌が促されると、それを合図に体内時計のリセットが促されます。

 

また、たんぱく質をとると効率よく熱が作り出されます。食事をとるとそれを消化吸収するためにエネルギーを使い、熱が生まれます。人が1日の中で消費するカロリーの10%はこの「食事誘発性熱産生」ですが、たんぱく質は栄養素の中でもたくさんの熱を産生してくれるのです。熱が生まれ体が温まると活動がしやすくなります。

 

たんぱく質は夜にとるよりも朝とったほうが熱産生が起こりやすい、つまりカロリー消費が高くなるので太りにくくなります。さらに、朝とったほうが筋肉も大きくなりやすいことがわかっています。筋肉が多いと基礎代謝が上がるため、それによっても太りにくくなります。

 

 

朝食で腸活食品を取り入れると生活リズムが整う

 

近年、腸の健康が心身全体の健康につながるということがわかってきていますが、腸活食材をとることは体内時計の調整にも役立ちます。

 

海藻や果物などに含まれている水溶性食物繊維は腸内で発酵・分解されると、短鎖脂肪酸という代謝物ができます。この短鎖脂肪酸が体内時計調節に役立つのです。

 

近年、腸壁がスカスカになり、アレルギーなどを引き起こす“漏れ腸”=リーキガット症候群が注目されていますが、短鎖脂肪酸は腸壁を強化することでこのようなトラブルも防いでくれます。

 

水溶性食物繊維の一種であるイヌリンは、食事による高血糖予防、便通、腸内細菌のいずれにおいても、夜よりも朝にとるほうが効果的だという報告もあるので、朝食は腸活のゴールデンタイムだといえるでしょう。

 

ヨーグルトなどに含まれているビフィズス菌と水溶性食物繊維を一緒にとると、多くの短鎖脂肪酸が代謝されることがわかっています。ビフィズス菌ヨーグルトにりんごなどの果物を混ぜて食べるとよいでしょう。

 

また、腸活の代表成分のひとつである乳酸菌も睡眠の質を高めることがわかっています。こちらもヨーグルトでとれるほか、漬物などの発酵食品で摂取できます。

 

 

体内時計を整えて快適な1日を迎えるための黄金朝食

 

では、具体的に朝食はどのような献立にするのがよいのでしょうか。

まず、たんぱく質から紹介しましょう。
たんぱく質がとれる食品でおすすめなのが青魚です。青魚には朝に摂取をすることで体内時計を朝型に合わせるのではないかと期待されているヒスチジンというアミノ酸が多く含まれています。青魚に含まれるDHAやEPAという脂質にも体内時計を調節する作用があります。これらの脂質は“頭がよくなる”とかアレルギーを緩和するといった効果があるといわれていますが、朝とるほうが効率よく吸収できることもわかっています。

 

ただし、DHAやEPAは単体でとっても時計遺伝子調節機能は働きません。一緒にでんぷん質をとることが必要なので、糖質であるご飯も一緒にとりましょう。白いご飯は血糖値を急激に高めて健康を損なう可能性があるため、糖質の吸収をブロックする水溶性食物繊維が含まれているもち麦をご飯に混ぜて炊くのもおすすめです。前述したように水溶性食物繊維は体内時計リセットの意味でも、腸活の意味でも大切な栄養素です。みそ汁にわかめを入れる、デザートにりんごなどの果物をとるのもよいでしょう。

 

朝食以外にも体内時計を整えるために行いたいことはたくさんあります。次は日中の過ごし方についてご紹介いたします。