記事一覧 | 2024.12.24

皮膚から始まるウェルビーイング(その2)なぜ「皮膚」なのか

【その1】はこちら↓
皮膚から始まるウェルビーイング 〜なぜ「皮膚」なのか(その1)

 

 

1.生命とは何か

そもそも生命、生き物ってなんだろうというと、膜に覆われている中に入っているのが基本構造なのです。ただ膜に覆われているだけであればシャボン玉みたいなのと同じになるのだけれども、その中にちゃんと製造していくための情報が入って、その膜自体が、外部と、その外の環境と物質やエネルギー情報の交換ができる特殊なシステムを持った膜で覆われているということ、これがとても大事だと思ったのです。

 

その膜の内部で自らの形が維持されて、それから自分で自己増殖できる機能を持っている。これが生命の定義だと思いました。
そうすると、細菌、バクテリアのようないちばん単純な構造の単細胞生物が、いわゆる生命の起源ということになると思うのです。これは、いろいろな意見、賛否があるかと思いますが、ウイルスは、そもそも、今のコロナウイルスやインフルエンザウイルスのようなウイルスも、生物なのか、どうなのか、いうことになるのです。
私としては、ウイルスは生命ではないと考えています。

 

異論のある方もいらっしゃると思いますけど、私は生命ではないと捉えています。なぜなら、RNAやDNAと言った 遺伝情報は持っているけれども、その情報を覆っているだけだからです。
あれは、生命の起源としての膜の働きは一切ないのです。ただ覆っているだけで、本当にそれこそ覆い物っていうことになるかと思います。さらに、ウイルスって自己増殖できないので、 他の細胞に入り込んで、そこで情報を重複していくというようなシステムになっているので、生命でなければ何かというと、ウイルスは情報です。

 

なんか乱暴な言い方になりますけど、ウイルスは情報と思っています。なので、その情報に感染すると言うと、なにかすごい嫌な聞こえ方になりますけど、その情報を取り込んで自分の進化のために利用してやるぞ、くらいに受け取ってしまえば、ウイルスは怖くないと思います。
また、その情報に食い尽くされて生命の危機に晒されてしまう場合も、それはもうその人それぞれの選択で決まっているのではないかと思うのです。よって、情報にやられるか、 情報を取り込んで自分のために使えるのではないかないかと、私はそんなふうに考えています。

 

要するに単細胞生物、バクテリアの覆っている細胞膜がいわゆる皮膚の起源と考えます。そして、その細胞がいくつか集まるか、もしくは分裂して増えていくのかもしれませんけど、多細胞生物になっていった時に、その外側を覆っている組織が皮膚で、それはもう、組織って言ってもいいのではないかと思っています。

 

 

2.皮膚とは何か

心臓、腎臓、肝臓などの、いわゆる内臓に対して、皮膚はもう、外臓っていう言葉は 正式にはありませんけど、外臓と言うべきものじゃないかなと思います。

生命が生存していく時に関わる情報っていうのは、その体の外の環境の中で生きていかなければいけないので、その生存に関わる情報っていうのは全て外にあるわけです。
それを感知するシステムとは、外と接している皮膚でなければならないですよね。中にあっても外の環境わかりませんね。
なので、多細胞生物になった時点で、皮膚は外との接触がインターフェイスみたいな感じですごく大事な場所になっているわけです。

 

そして、体が大きくなっていくと、外から得たその情報をお互いに情報交換していかないと中を維持できなくなるというところから神経系っていうものが発生してきただろうと言われています。
この系統図のちょっと上の方に上がったところにイソギンチャクやクラゲがいますけれども、これらは脳を持っていません。持っていないけど、全身皮膚組織で覆われているのと、それからネットワーク上の神経組織が初めて、この辺りで出てくるのです。

 

ちなみに、昆虫の中で、ダンゴムシって子供たちが好きだから、よくダンゴムシとかをお土産に持ってきてくれちゃったりする子どももいるんですけども、ダンゴムシを例にとって、「ダンゴムシって脳がないんだよ」って言うと、みんなびっくりするんですよね。

 

脳がないのに餌があると餌の方に行くし、なんかちょっとやばい環境だと思うとちょこちょこって土の中に逃げていくし、ちょんと触るとくるくるってまるまって身を守ろうとするでしょ。もうすごい 生命力ありますよね。
でも、「脳がないんだよ」って言うと
「えー、どうしてあんなことできるの?」
「皮膚があるからだよ」って。
だから皮膚って大事なんだよっていう話をよくしてあげます。

 

3.皮膚の進化

そして、皮膚がそうやって外部から 情報収集するという感覚システムは、やがて触覚、嗅覚、味覚、聴覚、視覚と、それぞれ、機能を分化させて進化していきました。生物の進化とともに、情報収集システム、感覚系と皮膚も進化していっただろうという風に考えられています。

 

周りの環境が過酷になってくると、皮膚が薄い膜だと破れちゃったりすると危ないですよね。なので、中にはウニとか、ヒトデのようにトゲトゲしたり、硬い殻、貝なんかもそうですけど、すごく外側を硬くして、重装備プラス脳なしという状態、戦略で生き残ってきた生物もいっぱいいるわけですよね。
それは多分正しい選択っていうか、作戦だったんじゃないかと思うのです。いろんな種類の生物がいますもんね。貝やヒトデに関してもいろんな生物がいるじゃないですか。その作戦は割と良かったということだと思います。

 

そうした海の中の生き物がやがて脊椎動物になって、進化して、陸上に上がってくるわけですけれども、 陸に上がってくる時に一番大事なこと、生命維持のために、それは何かって言うと、生命の中にある海を保ち続けなければならないっていうことですよね。私たちの体って、海水とほぼ同じ成分の、 だいぶ希釈はされていますけども、ほぼほぼ水でできています。
なので、それが流出してしまうと、この体が保てなくなるわけですから、皮膚の重要な役割の1つは、その体の中の海の流出を防ぐことだったわけですね。なので、陸に上がる時に、体を あの鎧のような殻でしっかり覆うっていう選択をした生き物もいると思いますが、そういう選択しなかった生き物っていうのは、皮膚の表面に角質層というね、水を通さない構造物を発達させたんですね。
それをさらに鱗とか羽毛、体毛っていったようなもので保護して、陸に上がって生き延びられるように進化してきた。

それで、その7億年、今から7億年ほど前に、そういうね、いわゆる角質層という水を通さない構造物、そういったものの、皮膚の原型が7億年ぐらい前に生まれただろうと言われています。
それはなぜか。なぜそんなことが分かるかっていうと、人間の皮膚の構造、特にバリア機能を維持するとか、皮膚の修復に関わるような遺伝子が 7億年前にあったっていうことがね、分子生物学的に証明されているからなんですね。

 

だから、7億年前に私たちは今のような皮膚の形を、そうやって生物が進化してきたわけですけれども。
じゃあ人間の皮膚っていうのを見た時に、人間の皮膚ってすごい特殊だと思いませんか。

何が特殊かって言ったら、こんなね、皮膚持っている生き物は、たぶん地上では他にないですね。

 

 

<皮膚から始まるウェルビーイングvol.1〜なぜ皮膚なのか〜>

*冒頭20分を公開しています